シベリア鉄道 資料編


ウラジオストク 2015年9月14日発 001Mロシア号 牽引機関車区間図
ベース図出典 シベリア鉄道 - Wikitravel



シベリア鉄道 路線縦断図 ウラジオストク→モスクワ

注)ウラジオストク→ウスリースク間 112kmについては機器不調により計測出来ず。
高度はGPS計測値

シベリア鉄道路線概要
区 間  :  モスクワ ~ ウラジオストク 
路線延長 :  9259km ニジニ・ノヴゴロド経由短絡線営業キロ程
 全線複線(ノヴォシビルスク駅起点側オビ川橋梁部のみ単線)
軌 間  :  1520mm
電化方式 :  モスクワ ~ ウラジミール  : 直流  3000V 区間長  210km 架空線方式
 ウラジミール ~ バレジィノ : 交流 25000V 区間長  944km 架空線方式
 バレジィノ ~ マイリンスク : 直流  3000V 区間長 2,526km 架空線方式
 マイリンスク~ウラジオストク : 交流 25000V 区間長 5,579km 架空線方式
 直流・交流の切換は駅における機関車交換による地上転換方式 
 区間長は短絡線経由の営業キロ


2015年9月14日 ウラジオストク発 001Mロシア号編成表

 編成概要

 基本編成:
 基本編成は9両で構成され、荷物車2両、1等車1両、2等車3両、3等車2両、食堂車1両で構成される。
 6号車は移動制約者用施設が配置される関係上、通常の2等車より定員が少ない。
 号車番号に抜けがあることから、乗車日の編成は閑散期で減車した編成であると推定される。
 

 増結車両:
 ウラジオストク~チェルヌイシェフスク-ザバイカルスキー間で5号車の後方に1両新型客車が連結された。
 ただし客扱いの有無については不明で、車輌設備より軌道検測車ではないかと想像する。

 チタ~イルクーツク間で5号車後方に食堂車1両、在来型客車(未確認)3両を団体客用として連結。
 
個別車輌の写真

荷物車1

荷物車2

13号車(3等寝台車)

12号車(3等寝台車)

8号車(寝台車)

7号車(1等寝台車)

6号車(2等寝台車)移動制約者対応車輌

食堂車

5号車(2等寝台車)

増結軌道検測車?
車内設備(1等車)

1等車室内
1等車室内
 編成中に1両連結される1等車で、1両あたり9室の2人用個室が配置される。
 実質的な室内の広さは畳2畳より若干広い程度との印象。
 2等車の4人用個室の場合は、この設備に上段ベッドが配置される以外は明確な違いはない。
 座席下は荷物置き場となっており、座面を持ち上げると上に上がるようになっている。
 ベッドにする場合は、廊下側のロックを外して背もたれを手前に倒すとベッドとなる。
 室内には廊下への扉上部にモニターが配置され、ビデオサービスを流すことが出来るが、内容は当然ロシア語となる。
 廊下への扉脇にスイッチが3種類あり、上から車掌のコールボタン、室内照明灯、常夜灯の配置となっている。
 室内照明は日中および深夜の消灯時間は車掌室の元スイッチが切られており点灯しない。
 照明については座席の端に読書灯が配置されており、こちらについてはいつでも使用可能となっている。
 ライトの向きを多少変更することは可能となっており、ライト脇のスイッチでON,OFFを行う。
 この読書灯の出っ張りが窓から車窓を見るために窓際に座ると邪魔になるため、車窓に見入るときには浅く腰掛けて、頭の位置を下げないと寄りかかったまま車窓を見ることは困難である。

 背もたれ上部は物入れも兼ねており、枕部分を手前に引き上げると収納スペースが現れる。
 収納部は3分割されて真ん中の1カ所はタオル掛けとなっており、この部分は基本的に収納は困難である。

 車内はエアコン完備のため冷房については上部のパネルのパンチ孔から冷風が吹き出し、暖房については窓下の暖房機が使用される。
 乗車時の室内は南側を向くこと事が多く、日差しが強い場合は廊下側の扉を開けてバランスを取らないと暑くなるケースもあった。

 電源は220VのC型プラグがテーブル下の壁面に配置されており、乗車中は通電されていた。
 プラグの抜き差しがしづらいのと相席となる乗客がいた場合を考えると短めのテーブルタップをつないでおくと便利。

廊下
 廊下は若干狭くて他人とすれ違うときは体を横にして壁際に寄らないとすれ違うことが困難である。
 廊下の窓間の壁には時刻表や案内なとが掲示されているがロシア語である。
 キリル文字だけでも読めるようになると時刻表の駅名が読めるようになり、駅での車外活動に非常に有利となる。

車掌室
 車掌室はトイレと反対側のデッキ側に配置され、車掌室と予備の車掌室の2室構成となっており、予備の部屋ではベッドタイプの座席も配置されているようだが、全長がやや短い印象を受けた。
 車掌室内には流し台、電子レンジなどの設備もあるが基本的には車掌用の設備のため乗客は使用できない。
 ただし車掌さんと仲良くなった場合は使用させて貰うことが可能な場合も有るかもしれない。
 通常駅では車掌室側のデッキのドアを用いて乗降を行い、反対側のトイレ側のドアは使用しない。

サモワール
 車掌室前にはサモワール(湯沸かし器)があり24時間お湯を貰うことは可能。
 結構揺れるので、手に掛からないように注意が必要。
 500ml程度の魔法瓶を持参すると部屋とサモワールを往復する回数が減らせて便利。

トイレ

 トイレは車掌室とは反対側のデッキに2室設置され、トイレ前にゴミ箱が設置されてるいる。
 新型客車では汚物タンクを用いた真空タンクのため、停車中でもトイレは使用可能。
 在来車は垂れ流し式のため、駅停車中はロックされて使用できない。
 トイレ内には便座用のアルコール除菌ウェットテッシュ(臭いがかなりきつい)、使い捨て紙製の便座シート、トレットペーパーが常備されているものの、ペーパーは時たま切れていることもある。
 便器にはこれら紙製の物は流すと詰まって故障するので、流すことは厳禁となっているので注意が必要。
 これらは便座脇のくず物入れに捨てる必要があり、トイレ前で車掌さんから説明されることもある。

1等車室内

1等車車内

背もたれの収納部

ベッド配置時

天井照明とエアコンの吹き出し(パンチ孔)

座席読書灯

1等車廊下

車掌室前サモワール(湯沸かし器)

車掌室

車掌室
客車のシステム構成に関する考察

在来車発電用ベルト

客車の電力供給システム
 シベリア鉄道の列車編成には電源車が見られないことから、各車両独立か機関車から供給を行うことが考えられるが、現地で車輌の細部見た結果、各車独立のシステムではないかと想像する。
 その根拠としては各車に大型の車軸発電機を搭載している点と、短時間停車時に停車後すぐにエアコンが切れることにある。
 機関車からの電力供給であれば、停車時に切れることはなく、また停車時の車掌はデッキでドア扱いを行っており、車掌室は無人となることから人為的にエアコンを切断したとは考えにくいためである。
 恐らくシステムとしては車軸発電機で発電しバッテリー経由で各電力をまかなうシステムであると考える。

 編成全体でシステムを構築すると、一部のダウンにより全体への影響が考えらる事から、1両単位で独立したシステムで運用を行っていると考える。
 これは以前から暖房に石炭ボイラーを各車に配置して運用してきたロシア流システムの延長にあるものと考える。
 厳冬期のシベリアで暖房が故障した場合は、乗客の生命に直結する危機であるため、各車を独立させ故障した場合は別車輌に退避するというのがロシアの列車システムの考え方であり、在来車、新型車が混成された列車でもこの考え方が踏襲されていると推測する。
 
発電機、台車
 客車の台車に設置された車軸発電機で電力を供給するが、在来車は車軸からベルト駆動で台車にマウントされた発電機を駆動するのに対して、新型車両では発電機は車体にマウントして台車からユニバーサルジョインで接続される。
 台車自体は在来型、新型客種とも同一形式で、軸受けは円筒案内式、車体支持はスイングハンガー方式となっている。
 枕バネ等は全てコイルバネを使用し、空気バネの使用車輌は基本的には存在しないようである。
 これは厳冬期の極低温でゴムが堅くなるなど、耐久性、信頼性の面から採用に踏み切れないのではないか思われる。
 また空気バネへの圧縮空気の供給で機関車のコンプレツサーに負荷が掛かりすぎることを考慮しているためかもしれない。
 ブレーキについては各車のブレーキシリンダーは車体にマウントされており、ロッドで台車のブレーキシューを作動させる構成となっている。
 今回の編成内には存在しなかったが新型客車の中にはSミンデン台車を装備している車輌も見かけたことから、新型の台車が順次採用されつつある模様である。

暖房システム
 ロシア号で使用されていた車輌の暖房システムは新型車と在来車で異なり在来車は従来通りの石炭ボイラー、新型車はボイラーが稼働していなかったため電気暖房を使用していると考える。
 ただし新型車もボイラーは搭載しているので厳冬期には石炭ボイラーを使用する可能性が高いが、今回乗車した9月の段階では石炭ボイラーを本格的に稼働させるほどではなかったのではないかと推測する。
 
乗降用ドア
 新型客車はヨーロツパで主流となっているブラグ式で低床式ホームの場合はドアのデッキ内に配置されている跳ね上げ式の踏み板を上に開けるとステップが降りてくる。
 高床式ホームの場合は踏み板をそのままとして、ステップは使用しない。

連結面
 連結器は自動連結器だがバッファーが配置される。
 ただしバッファーが配置されているにもかかわらず、走行中の前後方向の衝撃はそれなりにあるのできちんと機能を果たしているかは疑問である。

 貫通ホロはヨーロツパ式のU型ゴムの突きつけタイプとなっている。
 貫通扉は新型客車は押しボタン式の引き戸の自動ドア、在来車は手動の開き戸である。
 貫通路は隙間だらけな構造のため、列車外と同環境であり冬期に貫通路を通行する際には防寒具、特に手袋が必須となる。
 素手で触ったら寒さのため手が張り付いてしまうので、金属への接触は注意が必要。

在来車車軸発電機

在来車台車外観

新型客車台車外観


新型客車Sミンデン台車装備車輌


ボイラー用煙突、屋根上左側
右側煙突はサモワール用と推測

新型客車の発電機ユニバーサルジョイント

新型客車発電機

客車のステップ(新型客車)


乗降ドアステップの開閉状況(新型客車)

連結面(新型客車)

自動連結器

新型車水タンク

新型車汚物タンク
牽引機関車データ


第一走者 ЭП1(EP1) 247号機
牽引区間:ウラジオストク → ベロゴリスク
走行距離:1424km

ЭП1(EP1)型機関車諸元
製造開始:1999年
製造両数:381両
最高速度:140km/h
軸配置  :B-B-B
電気方式 :交流25000V
定格出力 :4400kW
起動時引張力:380kN
軸重:22.0t

諸元についてはウィキペディロシア語版より転載。

 製造時期は日本のEF210型機関車と同世代となるが、外観には旧東側車輌のデザインが残されている。
 東部シベリア地域の旅客列車の主力として活躍中。
 現在後継機として外観を近代的にした改良型のЭП1P(EP1P)が存在する。


第二走者 ЭП1(EP1) 298号機
牽引区間:ベロゴリスク → チェルヌイシェフスク-ザバイカルスキー
走行距離:1280km


第三走者 ЭП1(EP1) 135号機
牽引区間:チェルヌイシェフスク-ザバイカルスキー → ジマ
走行距離:1653km


第四走者 ЭП1(EP1) 056号機
牽引区間:ジマ → マイリンスク
走行距離:1222km


第五走者 ЭП2К(EP2K) 077号機
牽引区間:マイリンスク → バレズィノ
走行距離:2526km


ЭП2К(EP2K)型機関車諸元
製造開始:2006年(試作車)、2008年~(量産開始)
製造両数:304両(2015年8月時点)
最高速度:160km/h
軸配置  :C-C
電気方式 :直流3000V
定格出力 :4300kW
起動時引張力:302kN
軸重:22.5t

諸元についてはウィキペディロシア語版より転載。

 近代的な外観を持つ直流区間旅客用機関車。


第六走者 ЧС4T(ChS4T) 728号機
牽引区間:バレズィノ → ウラジミール
走行距離:944km

ЧС4T(ChS4T)型機関車諸元
製造開始:1971~1986年
製造両数:510両
最高速度:160km/h
軸配置  :C-C
電気方式 :交流25000V
定格出力 :5000kW
起動時引張力:300kN
軸重:21.0t

諸元についてはウィキペディロシア語版より転載。

 チェコスロバキア、シュコダ社製の旅客用交流電気機関車。


第七走者 ЧС7(ChS7) 284号機
牽引区間:ウラジミール → モスクワ
走行距離:210km

ЧС7(ChS7)型機関車諸元
製造開始:1983~1999年
製造両数:321両
最高速度:160km/h
軸配置  :B-B+B-B
電気方式 :直流3000V
定格出力 :6160kW
起動時引張力:382kN
軸重:21.5t

諸元についてはウィキペディロシア語版より転載。

 チェコスロバキア、シュコダ社製の旅客用直流電気機関車。